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「新年のご挨拶」


理事・副学長 研究・産学連携本部長 安藤 真

明けましておめでとうございます。東京工業大学の産学連携に、多大なるご理解、ご協力、ご支援を賜り、心より御礼申し上げます。2016年、本学は「教育」と「研究」についてシステムと体制を抜本的に変更し、昨年はこれをさらに推し進め「社会との連携」の中核である産学連携の組織改革を行いました。これは東京工業大学にとって「平成の大改革」とも呼ぶべき重要な一年でした。改革の標語である「トップ10のリサーチユニバーシティ」には、産学連携特に民間企業との共同研究を倍増する大学の決意が込められており、社会からは、日本再興のための科学技術イノベーションのエンジン役を大学が担うことが求められ、産業界も大学に対する共同研究の規模を5年で3倍に拡大する覚悟を表明しています。教職員と学生すべてが立ち上げ間もない「教育」と「研究」システムを推進する中で、このような大きな社会的要請を受けながらの産学連携改革には、多くの挑戦とともにスピードが求められました。

折りしも国立大学法人にとって2017年は、「指定国立大学認定」への大学間競争の渦中にありましたが、産学連携の観点では求められる方向性に共通点が多く、本学はあえて二兎を追う形をとりました。2030年に向け本学の進むべき方向性と研究戦略を大学構成員全員で共有すべくワークショップも繰り返し行ないました。その一方でこのようなオープンな大学改革推進と「指定国立大学」の情報管理を同時に進めることには大変な苦労がありました。

産学連携活動の体制改革として、昨年4月より学長を議長とする戦略統括会議で企画を全学として練るとともに、執行組織として「研究」と「産学連携」の組織をひとつの本部に統合し研究・産学連携本部が発足しました。これは本学の研究ポリシーに適う形として基礎研究から社会実装までを一貫して遂行する体制を整えるとともに、国や産業界からの外部研究資金の変容への適応と、学際分野や融合分野の振興を念頭に置いたものです。さらに学内横断的な研究や国と産業界など学外との協働の増進のために、教員と事務職員の間を繋ぎ研究を支援する人材としてURA(リサーチ・アドミニストレーター)を部局も含め30名以上配置しました。これらの施策により生み出される研究・産学連携活動の果実としての収益は、リベラルアーツや理学を含む全学の教育研究環境の充実に還元され、大学の機能強化を財政的に支える役割を担います。

昨年の活動の主だったものを列挙すると、学院・研究院レベルからの研究活動/シーズの見える化と組織研究および融合領域/学際分野の育成のための支援体制構築(URA部局配置、URA活動推進会議の発足、リサーチフェスティバル開催)、研究パンフレットの創刊(日英版)、大学の自立と企業との永続的な協働のための共同研究の費用分担の見直し、共同研究を加速する環境の整備として利益相反自己申告制度の開始、また、「学生スタートアップ支援」に加え芙蓉総合リース・みらい創造機構との協働によりGAPファンドを新たに設置し、学生から教員までをカバーし創業手前まで支援することを対象とした制度が開始され、ベンチャー活動のシームレスな支援が可能となりました。

2017年の取り組みによる成果の主だったものを列挙すると、地域連携型プロジェクトの推進(秋田医理工連携、殿町IT創薬設計ファクトリ)、未来社会創造事業の採択(量子センサー他3件)、産学共創プラットフォーム(都市防災)の採択、さらにURAの支援の成果としてさきがけ採択率の大幅な上昇、研究ユニットの整備として横井ユニット(ナノ空間触媒)の発足と大隅細胞ユニットのセンター化、産業界を牽引するコンソーシアム活動の推進(全固体電池技術、実大三軸加力装置計画)などがありました。イノベーション創出・ベンチャー育成に関しては、みらい創造機構との連携が順調に進み、9月には「みらい創造一号投資事業有限責任組合」が設立され、総額33.4億円を調達、東工大に関係の深いベンチャー8社への投資が実行されました。特筆すべきは、改革着手直後にもかかわらず産学連携の規模拡大の兆しとして、民間企業との共同研究が前年度比で6割以上伸長し、25億円へ迫る勢いを見せていることでしょう。これらは、企業の皆様と本学の教職員、それからURAのご尽力の賜物であります。はるか遠い目標ではあるものの、改革の標語である「トップ10のリサーチユニバーシティ」へ向けて幸先のよいスタートの年となりそうです。

さて、4月の新執行部へのバトン引継ぎまで3ヶ月をきりましたが、重要な課題も残されています。共同研究の費用分担の見直しについては、企業、教員、さらには事務職員にその趣旨をご理解いただく必要があります。特に、財源を翌年以降に持ち越す運用が伴わなければ大学の機能強化には資することができませんので、産学連携と財務戦略との綿密な連携が必要です。さらに共同研究に必要なスペースや設備使用料、教員人件費の計上、RA雇用の徹底など、費用算出に必要なルールの整備と、これら収入増を活用した大学機能強化への使途の「見える」化など、日本の大学運営では経験のない課題を克服せねばなりません。また人材育成(特に博士教育の強化)は大学の責務ですが、産学連携を通した持続可能な営みとして学生を対象としたRA雇用制度の充実と徹底を進めなければなりません。また世界最高水準の研究拠点であるELSI,WRHIのベストプラクティスを全学へ反映する国際化と海外オフィス展開は準備活動からいよいよ具体化に入ります。また、世界や社会の課題の解決や貢献の提案を行うシンクタンク組織形成など、中期計画を超える長期ビジョンも構想中です。今春には、大学改革をまとめた書籍「ロイヤルブルー本」を発行予定です。

2018年の産学連携活動の始動に向け、これまでの活動を振り返りました。最後に昨年の巻頭言の一部を繰り返します。本学は理工系の大学ですが、リベラルアーツとの密な連携、学術研究から課題研究までの守備範囲の広さなど、理工系総合大学としての多様性と機敏さを本来有しています。産学連携活動が知恵・資金・人材の好循環を生み出し、これを全学の教育研究環境の充実につなげることが、研究の多様性維持・拡大に繋がり、「トップ10のリサーチユニバーシティ」への脱皮の鍵ともなるでしょう。 東京工業大学は、責任の重さを認識し、決意を新たに皆様とともに前進いたします。どうか、本年も皆様にとって飛躍と成長の年となりますように。