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アナウンスメント

若手研究者紹介7

超臨界二酸化炭素を含浸溶媒とした眼科ドラッグデリバリーシステムの作製
大学院理工学研究科化学工学専攻 
下山 裕介


【要点】
・ 超臨界二酸化炭素への医薬物質の溶解量とレンズ内への薬物含有量との相関性を把握
・ 超臨界二酸化炭素中に水を添加することで,DDSレンズからの持続的に薬物が放出
・ 超臨界二酸化炭素を含浸溶媒とすることで医薬物質のレンズ内への物質移動を促進

【研究の背景】
 目への薬物投与では,目薬の滴下が一般的であるが,滴下直後の薬物濃度の急増や,涙液による流出が問題となります.近年,持続的かつ徐放性を有する眼科投与を目的とし,図1に示すコンタクトレンズに薬物を封入した眼科ドラッグデリバリーシステム (DDSレンズ)が注目されています.DDSレンズによる薬物投与では,角膜表面における房水への持続的な薬物投与が可能となります.また,超臨界二酸化炭素には,高い拡散性,低い表面張力の特性があるため,ポリマー内部への物質移動を促進させることが期待できます.本研究では,DDSレンズ内部へ医薬物質を含有させ,医薬物質の含有量の増加ならびに薬物の持続的な放出を念頭に,超臨界二酸化炭素を含浸溶媒として利用し,DDSレンズを作製しました.

【本研究での成果】
 薬物として抗炎症剤のSalicylic acidを,レンズに含浸率59 %のHilafilcon Bを用いた.超Salicylic acidを溶解した超臨界二酸化炭素をHilafilcon Bに接触させることで,DDSレンズを作製しました.図2に,超臨界二酸化炭素中におけるSalicylic acidの溶解度とDDSレンズにおける含有量との関係を示します.超臨界二酸化炭素中におけるSalicylic acidの溶解度は,温度および圧力を変化させることでコントロールしました.超臨界二酸化炭素に対するSalicylic acidの溶解度と,DDSレンズ中の含有量には,線形的な相関性があることが確認されました.図3に,超臨界二酸化炭素中への水の添加量と,薬物放出挙動との関係を示します.水を添加することにより,DDSレンズからの持続的に薬物が放出され,水の添加量の増加に伴い,DDSレンズ内への薬物含有量が増大しています.さらに,超臨界二酸化炭素中におけるレンズへの薬物の含浸は,水溶液中での含浸と比較して,約3〜7倍程度,物質移動が促進されることも確認されました.

【今後の展開】
 以上のように,超臨界二酸化炭素に対する医薬物質の溶解度は,DDSレンズ内への含有量と相関性があることから,DDSレンズの設計には,超臨界二酸化炭素に対する溶解度の知見が必要となります.筆者がこれまでに提案した分子表面電荷を利用した溶解度の推算モデル[1, 2]と,上記の結果を用いることで,DDSレンズの設計指針を確立することも期待できます.

【参考文献】
[1] Yusuke Shimoyama, Yoshio Iwai, Development of activity coefficient model based on COSMO method for prediction of solubilities of solid solutes in supercritical carbon dioxide, The Journal of Supercritical Fluids, 50 (2009) 210-217.
[2] Yusuke Shimoyama, Brendan Ng, Effect of mixing rule and activity coefficient model on prediction of solid - liquid - gas equilibria for carbon dioxide + organic compound mixtures using Peng - Robison equation of state and GE type mixing rule, Fluid Phase Equilibria, (2013).



図1:DDS レンズを利用した薬物投与
図1:DDS レンズを利用した薬物投与


図2:超臨界二酸化炭素中の溶解度とDDSレンズ内の含有量の関係
図2:超臨界二酸化炭素中の溶解度とDDSレンズ内の含有量の関係


図3:超臨界二酸化炭素中への水の添加量と薬物放出挙動との関係
図3:超臨界二酸化炭素中への水の添加量と薬物放出挙動との関係


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