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アナウンスメント

若手研究者紹介11

高精度鉛同位体分析による火星の地殻・マントル化学進化の解明
大学院理工学研究科 地球惑星科学専攻 助教 
臼井 寛裕


  火星は地球から最も近い距離にある生命の存在条件を満たした惑星であり、生命の存在に直接かかわる地殻、そして地殻を生み出したマントルの進化の解明は極めて重要である。本研究では、火星からもたらされた岩石試料(火星隕石)に、長半減期の放射性同位体系列であるU-Th-Pb系測定を適用することで、火星誕生時から現在に至る45億年間の火星地殻・マントルの化学進化を理解することを目的とする。

  U-Th-Pb系には、半減期の異なる3つの壊変系列(238U-206Pb, 235U-207Pb, 232Th-208Pb)があり、また火星内部の溶融過程において親核種・娘核種の挙動が異なる為、試料の鉛同位体比測定により火星内部の化学進化に大きな制約を与えることができる。しかしながら、鉛は地球環境からの汚染が他元素に比べ著しく大きいため、月および火星に代表される地球外物質に関し、信頼度の高い鉛同位体組成データは得られていない。このような現状を打破すべく、本研究では地球外物質化学分析に特化したクリーンルームを開発・設置し、最新の質量分析法を火星隕石に初めて適用することで、極微少量(<ng)および局所領域(<μm)における鉛同位体分析法の開発を目指す(図1)。

  具体的には、従来法の1/10以下、サブナノグラムでの鉛同位体分析法を開発する。開発要素として、(1) 閉鎖型クリーンベンチの導入、(2) 同ベンチを介在した低汚染化学処理法の確立、(3) 最新型の表面電離型質量分析計を用いた微小鉛同位体測定法の確立が挙げられる。また、UCLAとの共同研究により、高質量分解能型二次イオン質量分析計を用た局所での鉛同位体分析法の開発を行い、世界で初めて火星隕石への適用を試みる。二次イオン質量分析計は分析精度こそ表面電離型質量分析計に劣るものの、(i) サブミクロン領域での局所同位体分析が可能であり、かつ (ii) 環境鉛の汚染原因となる化学処理を必要としないという特徴が挙げられる。

  火星隕石に加え、他の地球外物質への適用も予定している。例えば、アポロ計画により得られた月試料の高精度鉛同位体分析を行い、月の内部化学進化の解明を目指す。将来的には、月・惑星試料の鉛同位体分析に関する世界的分析拠点を東工大に形成し、2020年以降に訪れる地球外物質サンプルリターン時代に備えたいと考えている。




図

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