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アナウンスメント

若手研究者紹介12

「構造物の長期性能変化予測と社会動態予測に基づく、インフラストラクチャーの維持管理・更新計画の策定支援プラットフォームの開発」
大学院理工学研究科 土木工学専攻 助教 
千々和 伸浩


ダム、堤防、港湾、道路、鉄道、橋梁、上下水道、電気、ガス、情報ネットワーク等々、日常に溶け込みすぎて意識にすら上らないほどの大量のインフラに支えられ、今日の我々の生活は成立しています。我々の安全で豊かな生活の基盤として、さらには国家の経済を支える産業の基盤として、これまでもこれからもインフラの存在は必要不可欠です。しかし昨今のニュースで取り上げられるように、インフラの高齢化が進み、その安全性に対して赤信号が灯り始めています。高度経済成長期に作られたインフラの数は膨大であり、それらは建設後50年を迎えつつあることから、これからインフラ高齢化の大波が押し寄せることになります。
高齢化による経年劣化が深刻になる一方、我が国では社会保障費の増大や税収減からインフラの維持管理に割く財政的余力がなくなりつつあるのが現状です。このため、インフラを構成する構造物の供用期間終了までの劣化進行予測に基づいた維持管理計画を策定し、点検によるモニタリングを踏まえながら、合理的に予算配分を行うことで、トータルとして少ないコストで最善の維持管理を行える取組みが始まっています。ただし、過疎が進む自治体においては、そのような取組みに着手できないほど財政が逼迫しつつある所もあり、この難局を打開する方策が強く求められています。
このような背景の中で本研究が取り組もうとしているのは、@点検結果に基づいた性能の定量的な評価手法の開発と、A@で開発した評価システムをベースに、将来の人口変動や人々の住まい方などの社会動態の変化やインフラを管理する自治体の独自の意思も踏まえた、インフラ整備・維持管理支援システムの開発です。
インフラは設置環境や設置目的に応じた一品生産品である上、自然環境下で供用されるため同じ構造物であっても劣化進展は異なります。また劣化が発生した位置によっても安全性に与える影響は異なり、似たような劣化でも複雑な内部相互作用の結果、ネガティブな影響を及ぼす場合もあればポジティブな影響を及ぼす場合もあることが知られています。このため点検で劣化が発見されたとしても、構造物が保有する残存性能(耐荷性能、耐震性能、疲労性能、耐久性等)を定量的に評価するのは困難とされてきました。最新の研究において、ようやく材料劣化に伴う複雑な耐荷機構の変化を評価する手法が実用化しつつあります。本研究はまず最終目標の達成の第一歩として、この評価手法を発展させ、点検データから残存性能を精度良く評価する手法の開発を行います。
インフラの維持管理においてはどこに目標を定めるのかも重要です。産業構造の変化、少子高齢化、地方の過疎化と都市の過密化、人々のライフスタイルに関する嗜好の変化など、我々の生活は大きく変化しつつあります。予算制約のある現状では、使われないインフラに大きなお金をかけて補修するのは合理的ではありません。今後使用頻度が上がるインフラや、防災上重要になるインフラには優先的に投資を行って機能の確保・拡充を図る一方、過疎化が進む地方のインフラにはその程度に応じた必要最低限の維持管理や再整備を行うように、メリハリを付けた維持管理計画を作成する必要があります。本研究の最終目標は、このような社会構造の変化と、これに伴って変化する使用環境下での精緻な劣化進行予測(@で構築)、更には自治体が今後どう発展していきたいかという将来像に向けた戦略に基づき、合理的な維持管理戦略を提案するシステムを構築することです。自治体の戦略シナリオに基づく未来予測とそれに必要な負担を住民に提示し、自ら選択してもらうことで、積極的な住民参加を促すとともに、それぞれの地域の独自性を発揮した発展につながるものと期待されます。
これまでの土木工学はコンクリート構造、鋼構造、地盤工学、河川工学、海岸工学、交通工学、土木計画など、細分化することで技術を高めてきました。これから我が国の迎える状況に対応するためには各分野の技術を深化させつつも統合し、新たな国土形成を担う学問として再構成する必要があります。本研究は正にその新体系を実現しようとするものであり、本研究を通じて、東工大をトレンドの先の、更にその先をいく研究リーディング拠点として発展させていければと考えています。

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