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アナウンスメント

若手研究者紹介13

「液晶性の活用による高品質な多結晶有機半導体薄膜の
作製と有機トランジスタ応用」
像情報工学研究所 像情報システム部門 准教授
飯野 裕明


  電子機器が生活環境に溶け込み端末の存在を気にせず情報にアクセス可能なアンビエントエレクトロニクスが期待されており、この実現にはフレキシブル基板上に印刷法で安価に作製できる薄膜トランジスタ材料が必須となる。安価なフレキシブル基板とし候補に上がるプラスチックは耐熱温度が低いため、150℃以下のプロセス温度かつ安価な溶液プロセスで作製できる有機半導体材料が期待されている。現在、高移動度の点で可溶性の低分子結晶材料が有望視されているが、高結晶性の材料ほど溶液プロセスで製膜すると基板上で再結晶化が起き、均一性に優れた結晶薄膜を作製することは原理的に困難である。また、結晶材料特有の結晶粒界、分子配向の困難さ、可溶化したことによる結晶薄膜の耐熱性の低下など課題がある。

  当研究室では自己組織的に有機分子が配向し凝集構造を構築する液晶物質に注目している。ここで注目する液晶物質は有機半導体として有望な大きなπ電子共役系をもった液晶分子であり、80℃以上で液晶相を発現し、そのπ電子共役系の凝集力の強さにより室温では結晶状態となる物質である。そのため、薄膜作製時に液晶状態を経由することで、液晶相を利用した分子配向の制御が容易であり、分子構造の異方性を助長した分子であるため結晶成長方向も異方的で粒界の入る方向を制御された多結晶薄膜が作製できる。また、溶液プロセスで結晶薄膜を製膜する際に、均一な液晶薄膜を前駆状態として活用することで非常に均一な多結晶薄膜が容易に作製でき、均一性やトランジスタ特性は真空プロセス作製された蒸着膜と同程度である。

  最近では、高秩序の液晶相を示す液晶性ベンゾチエノベンゾチオフェン誘導体(Ph-BTBT-10)において、スピンコート法で均一な多結晶薄膜が容易に作製でき、高秩序の液晶相のため溶解性を保持したまま結晶薄膜の耐熱性が200℃にも達し、多結晶薄膜に関わらず移動度10㎠/Vsを超す有機トランジスタの実現に成功している。このことは、有機材料にもかかわらず酸化物半導体に匹敵する高移動度という点だけでなく、均一性の確保、半導体膜作製後の後プロセスでの加熱が可能になる高耐熱性など、これまでの可溶性の低分子結晶材料の弱点を克服できており、有機半導体材料を実用的に使う上で液晶性の活用が鍵になるものと考えられる。

  現在は液晶性の有機半導体材料の電気特性評価としての有機トランジスタ試作の段階ではあるが、実用的な本材料系を用い有機ゲート絶縁膜やパッシベーション膜などとの積層、インクジェット法や各種印刷法を用いた有機半導体層のパターニング、フレキシブル基板上への集積化を通じて、液晶性の有機半導体材料の有用性を実証し、アンビエントエレクトロニクス社会の実現に貢献していきたいと考えている。




図

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