Top > 関連資料 > アナウンスメント > 挑戦的研究賞受賞者7

関連資料

アナウンスメント

「挑戦的研究賞」の受賞者紹介7

「電子ドナーとしての水素アニオン活用による新電子機能物質探索」
元素戦略研究センター 准教授
松石 聡


水素貯蔵用の水素化物や燃料電池用の水素イオン伝導体など、代替エネルギーに関連して、水素を含む物質が注目されています。最ありふれた元素である水素は、これら意図的に水素を含ませた物質だけでなく、あらゆる固体中に、不純物として普遍的に存在しています。近年、このような微量の水素が、物性や機能発現に大きな影響を与えていることがわかりはじめてきており、これに関しても多くの研究がおこなわれています。我々の研究グループでは、水素の中でも特に、負に帯電したH- (1s軌道に2個電子が入った状態)に着目し、機能材料の創製に役立てようと研究しています。酸化物などイオン性結晶中では、水素は陽イオンH+として存在すると一般には考えられてきましたが、2価の酸素イオンO2-と同様に1価の陰イオンH-として物質を構成している場合があるのです。O2-とH-の両方を含む物質は酸水素化物と呼ばれ、いくつかの合成例がありますが、その性質や使い道に関する研究はこれまでほとんどなされていませんでした。

酸化物中の1個のO2-を1個のH-で置換した場合、電気的中性を保つために、余分な電子が系にドープされます。これを応用することで、鉄系超伝導体の母物質であるLaFeAsOに高濃度の電子をドープすることに成功しました。この物質では元々、O2-の一部をフッ素イオンF-で置き換えることで電子ドープしたときに転移温度26 Kの超伝導が発見されていましたが、置換率を上げることができず、鉄あたり0.2個程度の電子ドープが限界でした。水素を用いた場合、この限界を0.5以上まで広げることができ、従来よりも高い転移温度(36 K)をもつ超伝導相が高電子ドープ領域に存在し、さらに高い電子濃度領域に反強磁性相が存在することを発見しました。この新しい超伝導相と反強磁性相は従来の理論研究では予測されておらず、鉄系超伝導体を含む超伝導体の研究分野で注目されています。

以上の研究成果は、酸化物系材料において、H-が高濃度電子ドーパントとして利用できる可能性を示しています。現在は、これまで電子ドーピングが難しかった物質に本方法を応用し、新機能性物質の探索を行っています。



図
H-置換による鉄系超伝導体LaFeAsOへの高濃度電子ドーピングの効果



譚ア莠ャ蟾・讌ュ螟ァ蟄ヲ