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アナウンスメント

「挑戦的研究賞」の受賞者紹介9

「紫外線硬化樹脂による光細線を用いた
InP/Si ハイブリッド光集積モジュールの開発」
量子ナノエレクトロニクス研究センター  助教
雨宮 智宏


「電子と光の境目を取り除き、1つのSiチップ中にそれらを同時に実現する(collapse the gap between electrons and photons, bringing those together onto a single piece of Si)」

2008年当時、インテルの上席副社長であったパット・ゲルシンガー氏(現VMware CEO)は、そのような言葉を残している。事実、SiをベースとしたLSIに光を導入する、いわゆるオンチップ光通信の研究は2008年当時から既に盛んであり、米国ではカリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)などを中心に国家プロジェクト体制で進められてきた経緯がある。

オンチップ光通信は、電気配線における回路遅延・伝送損失・電磁波干渉(EMI)などの問題を回避することができる上、波長多重化による大容量伝送も可能になることから、次世代の配線技術として有望視されている。光配線を実現するためには、Si LSI上に大きく分けて以下の3系統のデバイスが必要となる: @信号発生源である発光・変調素子、A伝送路としての光導波路、B信号検出のための受光素子。上記3系統の素子の中で実現が最も難しいものは、@の発光素子であり、間接遷移半導体であるSiをベースとしてこれを作製することは容易ではない。

以上の背景を受け、「Si LSI上にハイブリッド実装したIII-V半導体光デバイスを、紫外線硬化樹脂による3次元光細線で各デバイスに接続したオンチップ光伝送モジュールの開発」を行ってきた(図1a)。紫外線硬化樹脂による光細線を用いることで、ハイブリッド実装したIII-V族化合物半導体素子からの光信号を効率的にLSI側の光導波路へ導入することが可能となる。

Si上III-V族光源については、Si基板上に樹脂接合した半導体薄膜レーザを用いている。化合物半導体を200 nm程度に薄くした後、上下を低屈折率誘電体で挟むことにより、活性層の光閉じ込め係数を通常の半導体構造に比べて3倍程度まで高めることことに成功しており、閾値として1mA以下の低消費電力動作を可能としている。

オンチップ光配線に向けて個々の素子群がSi上に実現された後、それらの能動・受動素子を紫外線硬化樹脂による光細線により一括集積・接続することを目指した。この要求を満足する微細加工技術として、フェムト秒レーザーによる3次元光造形技術を利用することを考えた。本研究では紫外線硬化樹脂としてSU-8を用いており、既にLSIチップ上に化合物半導体の各素子をハイブリッド実装し、3次元樹脂細線により、各デバイス間を結ぶことに成功している(図1b)。現在までに、200-300 μm程度のチップ間において、結合損失は10dB程度となっている(理論上では1dB以下まで結合損失を下げることが可能であることが示唆されている)。

本研究が成功した場合、◆ LSIの配線ボトルネックを解消、◆ Si上ハイブリッド構造による光配線の微細化・低消費電力化、◆紫外線硬化樹脂による光細線構造を有する3次元での光伝送技術の構築などに貢献できると考えている。


図
(a)

図
(b)

図1 紫外線硬化樹脂による光細線を用いたInP/Siハイブリッド光集積モジュール (a) 概念図 (b) 実際に作製した光集積モジュール

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