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電子またはヒドリドイオンを含む新規固体触媒の開発
元素戦略研究センター・准教授 北野政明

アンモニア合成は、1913年に実用化され現在では全世界で年間約1.7億トン生産されており、人類が最も多く生産する化学薬品の一つとなっている。また、アンモニア分子は10気圧、室温で液化が可能であり、その体積密度は液体水素の1.5倍であることから、近年では貯蔵・運搬が容易な水素キャリアとしても近年注目されている。強固な三重結合を有する窒素分子の活性化は困難であり、窒素と水素からアンモニアを合成する工業的プロセス(ハーバー・ボッシュ法)でも高温・高圧の反応条件が必須であった。温和な条件下でも機能する触媒の開発が数多くなされたが、ハーバー・ボッシュ法を凌駕する触媒は見いだされていなかった。

我々は、電子を高濃度で有した無機化合物であるエレクトライドという新物質と、ルテニウムナノ粒子を組み合わせることで、温和な条件下でも作動するアンモニア合成触媒となることを見いだした。下図に示した12CaO・7Al2O3エレクトライドは、正に帯電したナノケージ内に電子を内包しており、金属的電気伝導性と金属カリウムに匹敵する低い仕事関数(2.4 eV)を有する。本触媒では、エレクトライド内に含まれる電子やヒドリドイオン(H-イオン)の役割によって優れた触媒活性が発現しており、従来の触媒とは全く異なる反応メカニズムでアンモニア合成反応が進行することを明らかにした。今後は、実用化を視野に入れたアンモニア合成触媒の開発や、エレクトライドを利用した新たな触媒反応にも展開していきたい。



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