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マイクロ電気機械素子とその金属結晶粒制御によるナノG慣性センサの創出
科学技術創成研究院 未来産業技術研究所・助教 山根大輔

近年、シリコン微細加工技術の発展により、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems:微小電気機械システム)と呼ばれる非常に小さな機械を容易に作製できるようになりました。我々の日常生活でも、すでに多くのMEMSが活躍しています。なかでも、ヒトやモノの「動き」を検出可能なチップサイズの小型加速度センサは、MEMSの代表的な応用例です。このような加速度センサは、例えば、自動車のエアバッグ制御やスポーツパフォーマンスの計測、スマートフォンの姿勢検出などに広く用いられています。加速度センサチップの内部では、微小な「錘」が微小な「ばね」で支えられています。このチップに加速度が印加されると、慣性力により「錘」とチップの相対的な位置関係が変化するため、その変位量から印加された加速度を検出できます。しかしながら、加速度センサの機械構造に由来する雑音は「錘」の質量に反比例するため、センササイズと最小検出感度のトレードオフが生じ、特に1ミリG(=1×10-3 G、G:地球の標準重力加速度)以下の微小加速度の検出が困難でした。そこで私は、錘材料を従来のシリコンから高密度の金属に置き換えることで、小型加速度センサの高感度化を推進して参りました。

今回、東工大挑戦的研究賞の受賞対象となった提案は、従来の小型加速度センサの未検出領域であった1マイクロG(=1×10-6 G)以下のナノG領域を検出可能な小型高感度慣性センサ(ナノG慣性センサ)の創出です。具体的な方法・アイデアとして、(1)従来材料(シリコン)より約10倍高密度な金を錘に用いることで、錘質量に反比例する機械ノイズを低減し、センサ高感度化を目指します。さらに、(2)金の結晶粒を制御して微小センサ構造の機械強度向上も行います。なお、本研究はNTTアドバンステクノロジ株式会社(NTT-AT社)と東京工業大学 科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所の曽根正人准教授の研究グループと共同で推進します。デバイス試作ではNTT-AT社のMEMSプロセスを用い、結晶粒制御技術では曽根正人准教授と共同研究を行います。

本提案センサが実現することで、正確な人体行動解析による医療診断・ヘルスケア、インフラ診断、ロボット精密制御、移動体制御システム、宇宙環境計測など様々な応用技術を開拓できます。さらに近年、あらゆるヒトやモノに大量のセンサを配置する時代の到来が予想されており、その際、動作検知の根幹となる小型慣性センサの高感度化は、様々な「動き(=慣性)」現象の利用・解明においてブレイクスルーとなるはずです。



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