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固体表面への触媒活性点集積による新規分子変換反応の開発
物質理工学院・応用化学系・講師 本倉 健

化学反応を制御し、望みの化合物を効率よく生産するには、触媒の果たす役割が極めて重要になる。我々の研究室では、固体表面に複数の触媒活性点を集積すると、それら活性点の協奏効果によって触媒反応が大幅に加速されることを見出した。例えば、塩基性の有機アミンと無機単体表面に由来する酸点とを固定化によって共存させると、酸・塩基による協奏効果が発現し、求核付加反応の効率が20倍程度向上する。一方で、塩基性部位と酸点とを固定化を経ずに直接混合すると、両者の中和反応によって触媒性能が著しく低下してしまう。このように、固体表面を用いることで初めて発現する活性点の協奏効果の概念を確立し、様々な触媒系への展開を目指して研究に取り組んでいる。

最近の成果としては、上述した酸・塩基だけでなく、金属錯体と活性有機分子とが固体表面に共存可能であることを見出した。Pdホスフィン錯体と1,4-diazabicyclo[2.2.2]octane (DABCO) を同一シリカ表面に固定した触媒は、求核剤のアリル化反応 (辻-トロスト反応) に極めて高い活性を示し、Pd基準の触媒回転数 (turnover number: TON) が100000回を超えることがわかった。従来の触媒系ではTONは2000回程度であり、活性点の集積による協奏効果によって極めて高効率な化学反応が実現可能であることがわかってきた。

現在は、この協奏効果を利用した環境調和型の触媒反応、例えば二酸化炭素の有用物質への変換反応等を実現するべく、新しい活性点集積型触媒の設計・開発を進めている。同時に、触媒反応に効果的な活性点の新しい集積・固定化方法の確立と、固体表面における活性点構造の分光法を駆使した詳細解析に関しても研究を推進中である。


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