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遺伝子工学的手法による藻類バイオマス生産性の向上
科学技術創成研究院 化学生命科学研究所 准教授 今村 壮輔

人類は、産業革命以降、石油資源をエネルギーとして利用し、また、炭素材料として様々な石油化学製品を生産して、近代社会を構築してきた。しかし、化石燃料や石油化学製品の大量生産と消費の結果、ピークオイルを迎え、更に、地球温暖化という深刻な問題が発生している。このことから、化石資源由来に替わるエネルギー生産系の確立と利用促進が喫緊の課題となっている。

そんな中、藻類が生産する油脂を用いたバイオ燃料生産が提案されており、恐らくこの方法のみが、化石燃料の代替となり得るであろうと予想する人も多い。その理由は幾つかあるが、(i)増殖の早さ、(ii)小スペースでの培養が可能、(iii)培養するのに必要になるのは、太陽光、二酸化炭素、そして水であり、二酸化炭素削減とエネルギー生産がカップルしているため、循環型社会に対応した燃料源となり得る、などが挙げられる。

藻類を用いたバイオ燃料生産を実現するためには、藻類が生産する油脂の生産性を向上させることが肝要である。しかし、藻類が油脂を蓄積する栄養欠乏などの条件は解っているものの、油脂蓄積を制御する基本的な仕組みは明らかになっていない。

我々はこれまで、藻類における油脂生産の基本制御系を明らかにすることを試み、その制御で枢要な役割を担う因子を同定することに成功している。その因子は、リン酸化酵素TOR (target of rapamycin) である。TORのリン酸化活性を人為的に阻害すると、油脂の蓄積が促進されることから(図1)、TORが、栄養欠乏などの情報を感知して、藻類バイオマス生合成のON/OFFを切り替える“チェックポイントキナーゼ”であることを突き止めた(図2)。

現在は、TORが油脂生産を制御する詳細な仕組みを解明し、その知見を基盤として、油脂生産性を格段に向上させた藻類株の作出を目指し研究を進めている。

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