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電子欠損性ホウ素化合物による革新的物質変換および新材料開発
科学技術創成研究院 化学生命科学研究所 助教 庄子 良晃

カーボンナノチューブ(CNTs)やグラフェンなどのナノカーボン類は、次世代エレクトロニクスの基盤物質として期待されている。例えばナノカーボンを用いた、ITOと代替可能な透明導電膜の開発は、産業界が強く望む課題の一例である。しかし、ナノカーボン材料の分散性と高い導電性を両立することが、未だ大きな課題となっている。我々は、基礎化学的に重要な電子欠損性ホウ素化合物に関する研究から、上記、ナノカーボン材料の問題点を克服する糸口を得た。最近我々は、ホウ素が結合の手を2本しかもたないカチオン化合物「ボリニウムイオン(図1a)」の合成に成功している(Nature Chem. 2014, 6, 498)。さらにこのボリニウムイオンが、ナノカーボン類に対してクリーンかつ強力なホールドーパントとして作用することを見出した。ホールドープされたナノカーボン類は、分散性・導電性が著しく増大する。特筆すべきは、ホールドープされたナノカーボン類が、既存の手法では実現できないほどの高い大気安定性を示すことである。そこで本研究では、ボリニウムイオンを用いたナノカーボン類の効率的ホールドーピング/分散化技術に基づく新材料開発に取り組んでいる。

また、我々は最近、電子欠損性ホウ素化合物を用いた全く新しいπ電子骨格構築反応(図1b)を報告している(Nature Commun. 2016, 7, 12704)。本反応を利用すれば、容易に入手可能な前駆体から、3次元骨格や湾曲・拡張π電子系により構成される分子・高分子がごく簡便に合成可能である。ナノカーボン類に加えて、これら特徴あるπ電子系分子・高分子も、ボリニウムイオンを用いたホールドープによる高分散化・高電導化の検討の対象とし、新規ナノカーボン材料の開発に取り組んでいる。

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