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アロステリズム応答性糖センシング
理学院化学系 准教授 福原 学

現在、医薬系・農学・香料など幅広い分野において、生理活性物質である糖の需要の増加に伴い、これらを高感度かつ選択的に検知できる光学センサーの開発は、基礎的学問にとどまらず応用面においても化学・生体系ナノテクノロジーとも密接に関連し社会に対する波及効果は高く、現代生命科学において挑戦的テーマの一つである。このようなセンシング分野において、とりわけ水中における選択的糖認識は、糖分子への強い水和と立体多様性のため非常に困難である。アカルボース(図d)は生体内で糖分解酵素を抑制する働きを持つ四糖で、II型糖尿病や肥満の治療薬として使われており、副作用軽減の観点からそのセンシングは非常に重要な課題である。にもかかわらず、上述してきた理由からそのセンシングは非常に難しい。

天然に豊富に存在する多糖であるβ-(1→3)結合のグルカンの一種であるカードラン(Cur; 図a)は、DMSO中ではランダムコイル状にほどけるが、水溶液中では再び三重螺旋構造を構築する可逆的螺旋形成能を有しているマクロ協同的挙動を示すダイナミック(柔軟)な多糖である(図b)。我々はこの柔軟な高分子主鎖であるCurに着目し、発色団としてジメチルアミノベンゾエート(DABz)を修飾した、修飾カードラン(DABz-Cur; 図c)が円二色性(CD)スペクトルによるエキシトンカップリングの光学出力からオリゴ糖であるアカルボース(図d)をセンシングできることを明らかにした。このような先行研究をもとに、今後はCurをレセプターとする新規な光学糖センサー構築のために、Curのマクロ協同的高分子主鎖への構造変化ダイナミクス、すなわち‶アロステリズム応答性”を利用することで、発色団として光学シグナル増幅リポーターを修飾したCurセンサーによる水溶液中での高感度オリゴ糖シグナル増幅センシングに挑戦する。



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