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耐熱超合金の破壊プロセスに対する結晶破壊力学アプローチ
工学院・機械系・准教授 阪口基己

Ni基耐熱超合金は優れた高温強度を誇るため、ジェットエンジンの高温材料として用いられていますが、稼働中にはさまざまな損傷を受け、材料中にはき裂が発生します。広い温度範囲で複雑な負荷を受ける高温材料の場合、その変形と破壊は、き裂先端の特異応力場を決定する破壊力学、結晶学的すべりと結晶粒界との相互作用を特徴づける結晶塑性学、そして、組織変化や粒界酸化といった材料物理化学が絡み合った複雑な問題になります。受賞者の研究室では、超合金のき裂発生・進展過程における破壊力学的な因子の影響を実験的に抽出し、かつ、き裂先端の力学場を結晶塑性解析により厳密に解析しながら材料の変形メカニズムと破壊プロセスの解明を目指しています。

き裂の発生と進展に関する問題は新しい研究分野ではなく、これまでにも鉄系、アルミ系の材料を対象にして多くの研究が行われてきました。ただ、耐熱超合金の場合、材料を構成する結晶を制御して製造しているため、材料中に含まれる結晶粒が1~10mmと非常に大きく異方性が強くなります。超合金の破壊プロセスに影響を与えるファクターを図に示していますが、結晶粒の配向方位が大きな影響因子になるのに加え、この結晶方位の影響が結晶粒のサイズやき裂の物理的長さでその都度変わっていくことがこの問題をもうひとつ難しくしています。また、ひとつの結晶粒から次の結晶粒にき裂が進むときに結晶粒界での不連続性がき裂の進展に影響を与えますが、この点についても明確な説明付けは行われていません。さらに、超合金は室温~1000℃に至る広い温度範囲でさまざまな力を受けますが、温度が変わると材料の特性も変わってしまい問題をさらに複雑にしてしまいます。さらに、これは高温強度を扱ううえでは避けて通れない問題ですが、材料が高温環境に長くさらされていると酸化や腐食、あるいは組織変化などの時間依存現象が進行してしまい、これによってさきほどの結晶方位の影響、粒界の性状、それぞれの温度での材料強度まで大きく変わってしまうため、このすべてのファクターの影響を加味して実際の破壊プロセスを理解することは極めて困難な問題となっています。

受賞課題では、この複雑な高温強度に関する問題を実験と解析によって包括的に解明することを目的にしています。ここで得られる研究成果が破壊力学と結晶塑性学の融合を促進させ、粒や粒界の最適設計を通した高信頼性材料の設計・開発に繋がればと期待しています。



図