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磁性トポロジカル絶縁体ヘテロ構造における室温量子異常ホール効果の実現
情報理工学院・物理学系・准教授 平原 徹

量子ホール効果とは強磁場下の2次元物質において、ホール抵抗が量子化される現象であり、物質の内部では電流が流れない。しかし、端(エッジ)にはトポロジカルに保護された状態が存在し、それが無散逸に流れるので、省エネデバイスへの応用が期待されている。さらに近年、ゼロ磁場でもこのようなエッジ状態が存在する量子異常ホール効果を示す物質が発見され(Bestwick et al., PRL 2014)、精力的に研究されている。これはトポロジカル絶縁体薄膜に磁性不純物をドーピングし、強磁性体することにより実現された。しかし、このような不純物添加により試料内に不均一性が生じるという課題があり、これまで2 K(-271℃)以上では量子異常ホール効果が観測されていない。室温で量子ホール効果が実現されているのに対し(Novoselov et al., Science 2007)、量子異常ホール効果の発現温度は極端に低いのが現状であり、電子デバイス開発に向け、室温での発現が強く望まれている。

我々は最近、自己組織化を用いた独自手法により、均一なMn強磁性層をトポロジカル絶縁体Bi2Se3の表面近傍に埋め込み、磁性トポロジカル絶縁体ヘテロ構造(MnBi2Se4/Bi2Se3)を世界で初めて実現した。この系では上記の試料のように不均一性が見られず、さらに磁化測定により室温でも強磁性の性質を示すことが分かった。これらの事実は、この磁性トポロジカルヘテロ構造を用いれば室温でも量子異常ホール効果が実現できることを示している。今後実際に量子異常ホール効果を観測し、デバイス応用に向けた応用研究を展開したいと考えている。



図

我々が作製に成功した磁性トポロジカル絶縁体ヘテロ構造の原子構造(a)、と電子状態(b)