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アナウンスメント

「東工大の星」採択者紹介3

「地質記録から地球初期の惑星環境を解読する」
地球惑星科学専攻・准教授        
地球生命研究所・準主任研究者(併任)
上野 雄一郎


現在の地球は太陽系の他の惑星と違い、多様な生物が住んでいます。地球が誕生した約46億年前から10億年たたずに生命が誕生し、およそ6億年前に至るまで数十億年の間、地球は微生物の生息する惑星だったことが分かっています。当時の地球環境、海の温度や大気の組成はどのようなものだったのか。そしてその惑星の環境が生物活動とどのように関わって進化してきたのかを知るために、過去の地層に残された岩石から様々な手法を駆使して環境を復元しようと試みています。

地球の大気組成は他の惑星と比較すると特徴的です。金星や火星の大気はその95%以上が二酸化炭素であるのに対して、地球大気の主成分は窒素と酸素です。光合成生物の出現したあと約23億年前には地球大気の酸素(O2)濃度が上昇しました。それ以前の大気は無酸素の還元大気だったはずですが、どの分子がどれくらい当時の大気中に存在したのかは未だによく分かっていません。

古大気の研究を行う上でのブレークスルーとなる発見が2000年にファーカーらによってなされました。堆積岩の硫黄同位体を研究した彼らは23億年以上前の地層に含まれる硫化鉱物に限って質量数33の硫黄が異常に濃集(もしくは枯渇)していることを発見しました。この同位体異常は非質量依存同位体分別(Mass Independent Fractionation: MIF)と呼ばれています。硫黄には質量数の異なる4つの安定同位体(32, 33, 34および36)があります。硫黄化合物AからBへの反応でこれらの存在度が変化する際には通常は規則性がある。

[33S/32S ]B/[33S/32S ]A = ([34S/32S ]B/[34S/32S ]A)1/2


これは質量依存の法則と呼ばれ、最も存在度の高い32Sを基準に他の同位体の存在度を表した時、質量数の1違う33Sの変化量は質量数の2違う34S のおよそ1/2になるというものです。この法則は地球上でおきるほとんどの物理化学過程で成り立つため、どの二つの硫黄化合物をとってきてもこの関係が見られるはずです。ところが例外的に大気中で紫外線が照射され二酸化硫黄が光解離する場合に限ってはこの法則が破られることがわかってきました。太古代の大気は酸素やオゾンを含まなかったため、紫外線は遮蔽されず、MIFを生じたらしい事がわかりました。この同位体の異常は硫酸などのエアロゾルとして海へ降り注ぎ、最終的には鉱物として地層に記録されています。またMIFは23億年前より若い時代の地層からは全く見つからないため、硫黄同位体の記録は約23億年前に地球大気の酸素濃度が上昇した事を示す最も強力な証拠となったわけです。

我々はこの同位体異常を用いて、さらに古大気組成の解読を行っています。実験室で光化学反応を再現し、同位体の比率が大気組成のいかなる条件によって変化するのかを再現することで、地層に残された記録は初めて解読できることになります。また、東工大地球史試料館には世界各地から採取された様々な年代の地層が保管されています。新しい解読法を実験的に確立する一方、開発した新手法を用いて岩石試料の分析を行うことで、初期地球の大気組成がどのように変動し、それが生物進化のイベントとどのような前後関係になっているのかがわかると期待しています。


図
概略図

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