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アナウンスメント

「東工大の星」採択者紹介5

「光学的手法を用いた有機半導体中におけるキャリア輸送の可視化技術」
理工学研究科 電子物理工学専攻
間中 孝彰 准教授


有機材料を用いたデバイスは、機械的な柔軟性や材料の多様性、作製プロセスの簡便性などが魅力となっています。高移動度材料の開発は有機デバイス研究を後押しし、有機ELやトランジスタ、太陽電池に関する研究が現在盛んに行われています。しかし実際には、移動度などの数値目標の達成を目指した研究が優先されている感が否めず、素子の動作機構解明に繋がるような基礎研究は不足しています。素子の性能向上を目指すためには、基礎的研究は不可欠であり、そのような研究への取り組みが急務となっています。


有機材料と電気電子工学との関係を考えると、高移動度材料の開発プロセスは、絶縁・誘電材料から導電性材料開発への流れとして捉えることもできます。したがって、有機半導体材料のルーツが「絶縁体・誘電体」であるという視点に立ち、デバイス動作を観測・解析することは、自然な考えと言えるでしょう。絶縁体や誘電体では材料本来のキャリア密度は低く、外部から注入された電荷も動きにくいため材料中に留まります。そして、この電荷によって形成された「空間電荷電界」が様々な電気現象を引き起こします。ゆえに、現在の有機半導体材料でも材料中の「電界」に着目することが重要であり、デバイス中キャリアダイナミクスについても、キャリアが作る「電界」に着目すればその挙動に関する知見が得られると考えられます。


このような背景から、私たちはこれまで、外部から有機デバイス内を運動する電荷の挙動を電界誘起光第2次高調波(EFISHG)法によって評価する手法を開発してきました。有機半導体は、高分子、低分子ともに偏在したπ共役系を有する材料が多く、電界印加によって比較的大きな電子分極が発生します(図1)。このような分極(すなわち材料中の電界)はSHGとして測定することができるため、電磁気学の基本法則であるガウスの法則から電荷が電界の源であるという点に着目することで、電荷の挙動を直接評価しようという測定方法です。


結果、有機半導体デバイスにおいて、動作中の電界分布を非接触・非破壊で計測することを可能にし[1,2,3,4]、さらには電子やホールといったキャリアを、電界という「場」を通してはじめて観測することが可能となりました[5]。これらの評価に関しては、高感度冷却CCDカメラで微弱なSHG信号をイメージングすることで、素子中の電界および電荷分布を直接可視化しています(図2)[5]。また、時間分解測定と組み合わせることで、素子中のキャリア輸送を可視化できると考え、実際に電界分布評価を発展させた時間分解イメージング測定を行い、有機トランジスタに注入されたキャリアが素子中を輸送される様子を動的に観測することに世界で初めて成功しました(図3)[6]。


このように、新規評価技術としてのEFISHG測定法を確立したことで、デバイス動作にかかる様々な要素を評価することが可能となりました。例えば、キャリアの動きをEFISHGで可視化すると、任意の時間におけるキャリアの速度と電界強度を評価できるため、ここから移動度を直接見積もることができ、過渡的なキャリア輸送をモデル化することができました[7, 8, 9, 10]。さらに、電極端における電界分布を評価することで、接触抵抗の評価[11, 12]や、キャリア輸送の形状からトラップ密度[13, 14]等のパラメータも評価できることを示してきました。特に最近では、単結晶材料などで問題となるキャリア輸送の異方性を簡便な手法で直接観測できる技術を開発しました[15]。一方、この手法が電荷によって材料が分極すれば測定が可能なため、有機半導体のみならず無機半導体でも適用ができ、例えばポストシリコンの新材料におけるトラップ電荷の可視化[16]などへの応用も期待されます。



図1
図1:外部電界で有機半導体は分極し、SHG信号が発生。


図2
図2:顕微SHG測定の模式図。


図3
図3:時間分解SHG測定による有機トランジスタ中のキャリア
輸送評価(a)、半導体薄膜中の輸送異方性。


図4
図4:有機薄膜トランジスタで実際に可視化されたキャリア輸送




[1] T. Manaka, M. Nakao, D. Yamada, E. Lim, M. Iwamoto, Optics Express, Vol. 15, No. 24, pp. 15964-15971 (2007).
[2] T. Manaka, E. Lim, R. Tamura, D. Yamada, M. Iwamoto, Appl. Phys. Lett., Vol.89, No. 7, Art. No. 072113 (2006).
[3] T. Manaka, E. Lim, R. Tamura, M. Iwamoto, Appl. Phys. Lett., Vol.87, No. 22, Art. No. 222107 (2005).
[4] T. Manaka, Y. Suzue, M. Iwamoto, Jpn. J. Appl. Phys., Vol.44, No. 4, pp.2818-2822 (2005).
[5] T. Manaka, M. Nakao, E. Lim, M. Iwamoto, Appl. Phys. Lett., Vol. 92, No. 14, Art. No. 142106 (2008).
[6] T. Manaka, E. Lim, R. Tamura, M. Iwamoto, Nat. Photon., Vol. 1, No. 10, pp. 581-584 (2007).
[7] T. Manaka, F. Liu, M. Weis, M. Iwamoto, Phys. Rev. B, Vol. 78, No. 12, Art. No. 121302 (2008).
[8] M. Weis, J. Lin, D. Taguchi, T. Manaka, M. Iwamoto, J. Phys. Chem. C, Vol. 113, No. 43, pp. 18459-18461 (2009).
[9] T. Manaka, F. Liu, M. Weis, M. Iwamoto, Appl. Phys. Express, Vol. 2, No. 6, Art. No. 061501 (2009).
[10] T. Manaka, F. Liu, M. Weis, M. Iwamoto, J. Phys. Chem. C, Vol. 113, No. 23, pp. 10279-10284 (2009).
[11] M. Nakao, T. Manaka, M. Weis, E. Lim, M. Iwamoto, J. Appl. Phys., Vol. 106, No. 1, Art. No. 014511 (2009).
[12] T. Manaka, M. Nakao, M. Weis, F. Liu, M. Iwamoto, Thin Solid Films, Vol. 518, No. 2, pp. 485-488 (2009).
[13] Y. Tanaka, T. Manaka, M. Iwamoto, Chem. Phys. Lett., Vol. 507, No. 1-3, pp. 195-198 (2011).
[14] T. Manaka, F Liu, M. Weis, M. Iwamoto, J. Appl. Phys., Vol. 107, No. 11, Art. No. 043712 (2010).
[15] T. Manaka, K. Matsubara, K. Abe, M. Iwamoto, Appl. Phys. Express, 6, 101601 (2013).
[16] T. Katsuno, T. Manaka, T. Ishikawa, H. Ueda, T. Uesugi and M. Iwamoto, Appl. Phys. Lett. 104 , 252112 (2014).

譚ア莠ャ蟾・讌ュ螟ァ蟄ヲ