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関連資料

アナウンスメント

「東工大の星」採択者紹介6

「 非破壊計測の基盤技術創成に向けた
高機能テラヘルツ波分光イメージング開発 」
量子ナノエレクトロニクス研究センター 准教授
河野 行雄


■背景・目的

テラヘルツ(THz)電磁波は可視光を通さない物質でも適度に透過すること、電磁波を光子と見立てた場合の光子エネルギーがmeVという様々な物質・生体系の重要な領域に属することから、この電磁波の強度分布を空間的にイメージングする技術は、セキュリティや材料・生体検査などへの応用が可能である。そのため、研究現場・生産現場だけでなくわれわれの日常生活にも大きな恩恵をもたらすことが期待され、世界中から熱い視線が寄せられている。
 しかし、テラヘルツ波は従来の電子工学と光学が適用できる境界の領域に位置するため、技術開発に多くの課題が残されている。従来のテラヘルツ分光手法では高価で複雑な構成を持つ機器を購入しなければならず、テラヘルツ技術の一般的な普及を限定的なものにしている。また、波長が可視光に比べて2,3桁長いため、イメージングの解像度が光学画像のそれに比べて低いという問題がある。
 われわれは、高感度、高解像度、広帯域という優れた性能を持つテラヘルツ撮像・分光素子の開発を行い、コンパクトなワンチップ型に基づく、ポータブルで使い勝手が良い計測システムを目指す。


■主な成果
@検出器開発:半導体量子構造・カーボンナノチューブを用いた高感度THz検出器

カーボンナノチューブ量子ドットと半導体中2次元電子ガスが結合したハイブリッド構造を作製して、2次元電子中でTHz励起されたキャリアを、カーボンナノチューブによる高感度電荷センサ−で読み取る機構を創出した(図1) 〔Y. Kawano et al., Appl. Phys. Lett. 95, 083123 (2009); Laser & Photonics Reviews (Wiley-VCH, Berlin) 6, 246 (2012); 日本光学会誌 41, 521 (2012); 特許登録5107183〕。さらに最近、広帯域受信可能なログペリオディックアンテナと量子ドットが結合したデバイスを作製し、検出効率を20倍以上向上させることに成功した。また、カーボンナノチューブのアレイ薄膜構造を用いることで、室温でTHz波を検出できることを実証した 〔X. He et al., Nano Lett. 14, 3953 (2014)〕(ライス大、サンディア国立研との共同研究)。


Aイメージング開発:オールインワンチップ近接場型とナノ顕微THz計測

分解能が波長程度(0.1〜1mm)に限定される回折限界を超えるため、近接場THzイメージングの開発に取り組んだ。従来よく使用される先鋭プローブ式から発想を変えて、アパーチャ・プローブ・検出器全てが半導体ワンチップに集積化されたユニークな素子を考案・創出した(図2)。この素子により、近接場THz光のみを高感度に検出し、波長の制限を突破することに成功した 〔Y. Kawano et al., Nature Photonics 2, 618 (2008); IEEE J. Selec. Top. Quantum Electronics 17, 67 (2011) (Invited paper); 日本光学会誌 38, 81 (2009) (巻頭口絵に採択)〕。この素子は、各要素間の光学的・機械的調整が不要で信頼性・実用性が高い 〔国内特許登録5392888 (2013)〕。これにより、外部THz光源を用いず、半導体におけるTHz発光分布の近接場顕微計測を可能にした。


B分光素子開発:グラフェンによる広帯域周波数可変THz検出

従来のTHz分光は、フーリエ分光ならびに時間領域分光の2つの手法により行われているが、前者は低周波帯になるほど、後者は高周波帯になるほどS/Nが下がる。最近われわれは、グラフェン(炭素結晶の単原子層)のランダウ準位形成が通常の半導体とは著しく異なることに着目し、0.76〜33THz程度の相当な広帯域における、ディラックフェルミオンのTHz電磁波共鳴による光伝導を実証することに成功した 〔Y. Kawano, Nanotechnology 24, 214004 (2013); Contemporary Physics 54, 143 (2013) (Selected for cover); レーザー研究 42, 645 (2014)〕。この結果は、新しい広帯域・周波数可変THz・赤外検出器になることを示しており、新しい分光用素子としての活用が期待できる 〔河野行雄 他: 国内特許登録5473616 (2014); 米国特許登録US7947955B2 (2011)〕。



図1
図1:半導体量子構造・カーボンナノチューブハイブリッド素子による
THz検出の概念図


図2
図2:近接場THzイメージング素子の概念図


今後の取り組み

上記のTHz素子を基に、すでに半導体デバイス、アンテナ、高分子等の分析への応用が実証されている。今後は、産業向け検査・分析用のTHz計測システムを開発する。物質・生体分析、デバイス検査、品質管理等への応用を目指す。


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