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関連資料

アナウンスメント

「東工大の星」採択者紹介1

「細胞の自食作用「オートファジー」の生理的役割と分子機構の解明」
生命理工学院 准教授 中戸川 仁


すべての生物は、細胞というとても小さな部屋のようなものを単位としてできています。たった一つの細胞で生きている生物もいますが、私たちのからだはおよそ60兆個の細胞の集まりです。細胞に異常が生じれば、それが病気の原因にもなります。細胞一つ一つを健常に保つことが、個体レベルでの健康維持にもきわめて重要です。オートファジーは、細胞の中の「掃除屋」です。たとえば、オートファジーは細胞の中の成分(タンパク質や細胞内小器官など)を常に少しずつ分解し、新陳代謝を促すことで、「ゴミ(古い成分)」がたまることを防いでいます。これは細胞の老化の抑制につながり、種々の神経変性疾患の発症抑制とも深い関連があります。また、細胞の中に有害なものが生じたり、細菌やウイルスが侵入してきた場合には、オートファジーはこれらを見つけて取り除いてくれます。さらに、細胞が栄養不足に陥ると、オートファジーは細胞内の成分を激しく分解して分解産物を栄養として供給します。このように、オートファジーは細胞にとってとても重要な様々な役割を果たしています。


図1にオートファジーの仕組みを示します。まず、オートファジーで分解されるものは、脂質の膜でできた袋「オートファゴソーム」で包み込まれます。続いて、オートファゴソームは包み込んだものを、様々な分解酵素を含む細胞内小器官「リソソーム」に運び入れます。オートファゴソームは細胞内の「廃棄物収集車」に、リソソームは「廃棄物処理工場」に例えることができます。オートファジーが起こる仕組みを理解することは、私たちはどのようにして生きているのか?といった基礎科学的な意味で大変興味深い課題であると同時に、オートファジーが関係する病気の理解や治療法・予防法の確立のための重要な基盤情報となります。本研究では、出芽酵母というシンプルで優れたモデル生物を用いて、オートファジーの中心的イベントであるオートファゴソーム形成のメカニズムを分子レベルで明らかにすることを目的の一つとしています(図2)。膜は細胞の中の何を材料にしてどのようにして伸びていくのか?オートファゴソームの形成機構にはこのようなごく基本的な問題が謎のまま残されています。蛍光顕微鏡や電子顕微鏡を用いて細胞内での膜の形成過程を可視化したり、オートファジーに関わるタンパク質を単離して試験管の中でオートファジーの素過程を再現し、精緻な解析をおこなうなどしてこの謎の解明に取り組みます。もう1つ、本研究では、細胞内のどのような成分がオートファジーで分解されるのか、その全体像を把握することも課題としています。(図2)

オートファゴソームに特定の対象が選別されて取り込まれる際、それらは共通して形成途中のオートファゴソーム上のAtg8というタンパク質に結合します。Atg8に結合するタンパク質を質量分析で網羅的に決定するなどしてこの課題の達成を目指します。本研究により、オートファジーの研究分野に新たな境地を開拓していきたいと考えています。

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