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関連資料

アナウンスメント

「東工大の星」採択者紹介2

「放射性核種分離分析に向けた機能性マイクロ・ナノ化学システムの創成」
先導原子力研究所 准教授 塚原剛彦


研究の概要

原子力関連施設から発生する大量の放射性廃棄物を安全かつ合理的に処理・処分するには、放射性核種の種類や濃度・組成を分析して、廃棄物の性状に応じた分類分けが不可欠です。しかし既存の分析手法では、複雑かつ長時間の化学操作と大型装置が必要で、二次廃液の増加や作業に伴う被ばく量の増大が問題となっています。この状況に加え、福島第一原子力発電所事故によって破損燃料由来の放射性核種、海水注入に起因した塩分、汚染水処理に用いる吸着剤等、従来では考えられない廃棄物も発生しており、分析に係る作業の複雑さが益々増大する状況になっています。従って、極微量で迅速・簡便に放射性核種を分離分析できる新しい技術の確立が強く望まれます。


一方、材料や空間がマイクロ・ナノサイズまで小さくなると、マクロとは異なるユニークな特性を発現することが知られています。例えば、周期的に配列したナノ構造物から成る材料は、高度な電子・スピン・光の制御を可能にします。また、マイクロ・ナノサイズの空間では、大きな比界面積や重力より界面張力が支配といった特徴を有するため、溶液や流体中での迅速な化学反応が可能です。このようにマイクロ・ナノは、エレクトロニクス・フォトニクスから化学・バイオに至る学術と工学に新しい展開をもたらしています。そこで我々は、マイクロ・ナノの特性を巧みに利用すれば放射性核種の分離分析に係る課題を解決できることを着想し、試料1滴で放射性核種を分析できる機能性マイクロ・ナノ化学システムを創成することを目指しています。

トップダウンとボトムアップ加工を組み合わせて、流路の形状や流路表面の親水・疎水性が異なる複雑なマイクロ・ナノ流路を加工し、この流路内で油水の平行二相流やセグメント流の形成及び規定量の切り取りなどを可能とする連続流体操作を実現しました。この油水の流れを蛍光顕微鏡や熱レンズ顕微鏡により観測することで、アクチノイドやランタノイド元素の溶媒抽出に伴う濃度変化をリアルタイムで検出することが可能です(図1)。マイクロ・ナノサイズの電極を組み込むことで、ウランの電解価数調整(U(VI)/U(IV))を伴う抽出にも成功しています。本手法では、分析時間は数秒〜数分で、試薬量はマイクロリットル(10−6 L)以下で済みます。数時間かつmL (10-3L)以上が必要な通常の分析に比べて、極めて迅速かつ極微量で分析可能なことが分かります。また、100nmサイズの流路内では水物性そのものが変化(高次配向、高粘度、高プロトン移動度など)し、水和イオンと流路壁面間の僅かな静電相互作用の差が顕在化されることを発見しました。相互作用の強さに応じて個々の金属イオンの流れる速度が異なるため、同じ3価のランタノイド同士であっても、ナノ流路内に流すだけで、容易に相互分離できることを明らかにしています。

検出法をさらに簡便化するべく、ガラス基板上にフォトニック結晶の発色変化と感応性ポリマーゲルのイオン選択性(クラウンエーテル環のような官能基含有)を併せ持つ金属イオンセンサーの開発も進めています。フォトニック結晶は、モルフォ蝶の羽のような100 nmサイズの規則構造を持つ物質のことで、特定の波長のみを反射して色を呈します。このフォトニック結晶をポリマーゲルで包接して膜化しておけば、金属イオンの吸脱着に応じてゲルの収縮・膨潤が起こるため、反射光の変化として検出することができます。実際に作製したオンチップ高分子フォトニック結晶膜にストロンチウム(Sr)水溶液を滴下したところ、膜の色が水色から青色まで数秒で変化することを確認しました(図2)。1滴で金属イオンの存在を視覚的に検出でき、迅速・簡便かつ二次廃棄物が少ない分析法として期待されます。

現在、これらマイクロ・ナノ化学システム全体の耐放射線性、操作の自動化、実廃液試験などを実施し、実用化及び現場への適用へ向けた挑戦を続けています。

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図1 マイクロ化学システムによるウラン分離分析及び電解価数調整



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図2 オンチップ高分子フォトニック結晶膜によるSrセンシング

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